しゃがむとかかとが浮くのはなぜ?足首の硬さと身体への影響を解説
「しゃがもうとすると、どうしてもかかとが浮いてしまう」
「かかとを床につけたままだと、後ろに倒れそうになる」
「昔は普通にしゃがめていた気がするのに、最近うまくできない」
こんな経験はありませんか?
かかとをつけたまま深くしゃがむためには、膝や股関節だけでなく、足首が前に曲がる動きも必要です。
そのため、しゃがんだときにかかとが浮く場合、足首の動かしにくさが関係していることがあります。
ただし、「かかとが浮く=足首が硬い」と単純に判断できるわけではありません。
ふくらはぎ周辺の柔軟性や足首の関節の動き、膝・股関節の使い方、足幅やつま先の向きなどによっても、しゃがみ方は変わります。
また、足首はしゃがむときだけに使う関節ではありません。歩く、階段を上り下りする、椅子から立ち上がるといった日常動作でも、身体を前後に移動させるために足首は動いています。
足首が動かしにくいと、その分を膝や股関節、上半身の動きで補いながら動作を行うこともあります。
そのため、「しゃがめる・しゃがめない」だけではなく、普段どのように身体を使っているのかを見ることも大切です。
この記事では、しゃがむとかかとが浮く理由をはじめ、足首が硬くなる原因、しゃがむときに起こりやすい身体の使い方の変化、膝や腰への負担との関係について詳しく解説します。
さらに、ご自宅でできる足首の動きのチェック方法やセルフケアもご紹介します。
「身体が硬いから仕方ない」と終わらせる前に、まずはしゃがむ動作から、自分の足首がどのように動いているのかを確認していきましょう。
しゃがむとかかとが浮く…原因は「身体が硬いから」?
しゃがんだときにかかとが浮くと、「身体が硬いからかな?」と思う方も多いのではないでしょうか。
確かに柔軟性は関係しますが、もう少し細かく見ると、ポイントの一つになるのが足首を前に曲げる動きです。
まずは、しゃがむときに足首で何が起こっているのかを見てみましょう。
かかとをつけてしゃがむには「足首が前に曲がる動き」が必要
立った状態からゆっくりしゃがんでみると、お尻が下がるのと同時に膝が前へ移動していきます。
このとき足首では、すねが足の甲に近づくように前へ傾く動きが起こっています。
これを「足関節の背屈(はいくつ)」といいます。
「足首を曲げる」と聞くと、つま先を動かすイメージがあるかもしれません。
しかし、足を床につけた状態では、かかとを床につけたまま、すねが前へ倒れていくのも足首の大切な動きです。
深くしゃがむほど膝も前へ移動するため、それに合わせて足首にもある程度の背屈が必要になります。
つまり、しゃがむ動作は「膝を曲げて、お尻を下げる」だけではありません。
足首・膝・股関節がそれぞれ動きながら、身体のバランスを保っている動作なのです。
足首が曲がりにくいと、なぜかかとが浮きやすくなる?
では、足首を前に曲げる動きが小さい状態で、さらに深くしゃがもうとするとどうなるのでしょうか。
かかとを床につけたままでは、すねをそれ以上前へ倒しにくくなります。
それでも身体を下へ降ろそうとすると、かかとを持ち上げることで足首の動きを補い、しゃがみ動作を続けることがあります。
実際に、
「途中まではかかとをつけていられるけれど、深くなると浮いてくる」
「かかとを床につけようとすると、後ろへ倒れそうになる」
という場合は、しゃがむ深さに対して足首を前へ曲げる動きが足りていない可能性があります。
ここで大切なのは、かかとが浮くことそのものより、“かかとを浮かせないとしゃがみにくい理由”を見ることです。
足首がどの位置まで動いているのか、左右で違いはないか、膝や股関節はどのように動いているのかによっても、しゃがみ方は変わります。
「かかとが浮く=足首が硬い」とは限らない
ここまで読むと、「じゃあ、かかとが浮く人は足首が硬いんだ」と思うかもしれません。
しかし、必ずしもそうとは限りません。
しゃがむ動作には足首だけでなく、膝や股関節の動き、足幅、つま先の向き、身体のバランスの取り方など、さまざまな要素が関係します。
たとえば、足幅を少し広げたり、つま先を外側へ向けたりすると、先ほどよりしゃがみやすくなる方もいます。
また、足首は動いていても、股関節を十分に曲げにくかったり、しゃがむときの身体の使い方によって後ろへ倒れそうになったりすることもあります。
さらに、骨格や手足の長さなど身体的な特徴によっても、しゃがみやすい姿勢は一人ひとり異なります。
そのため、「かかとが浮く」という一つの動作だけを見て、足首が硬い、身体に問題があると判断することはできません。
ただし、足首の動かしにくさが関係している場合には、「なぜ足首が動きにくくなっているのか」をもう一段掘り下げることが大切です。
次は、ふくらはぎの筋肉だけではない、足首が硬く感じる理由について詳しく見ていきましょう。
足首が硬くなるのはなぜ?ふくらはぎだけが原因ではありません
「足首が硬い」と聞くと、ふくらはぎのストレッチ不足を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、足首の動かしにくさには、筋肉の柔軟性だけでなく、足首の関節の動きや過去のケガなど、いくつかの要素が関係することがあります。
そのため、「足首が硬いから、とにかくふくらはぎを伸ばせばいい」とは限りません。
ふくらはぎの筋肉が硬いと足首を曲げにくくなることがある
ふくらはぎには、「腓腹筋(ひふくきん)」や「ヒラメ筋」といった筋肉があります。
これらはアキレス腱につながっており、歩く・走る・つま先立ちをするなど、足首を動かすさまざまな場面で働いています。
一方で、しゃがむときには、かかとを床につけたまますねを前へ傾けていく必要があります。
このとき、ふくらはぎからアキレス腱周辺の組織が十分に伸びにくいと、すねを前へ倒す動きが制限されることがあります。
すると、ある程度まではしゃがめても、深くなるにつれてかかとが浮いたり、足首の後ろ側につっぱりを感じたりすることがあります。
ただし、ここで「つっぱる=筋肉が硬い」と自己判断するのは早いです。
足首の前側に詰まるような感覚がある場合など、感じ方によっても考えられる要素は異なります。
膝を伸ばしたとき・曲げたときで足首の動きやすさが変わる
同じふくらはぎの筋肉でも、腓腹筋とヒラメ筋には違いがあります。
腓腹筋は足首だけでなく膝の関節もまたいでいる筋肉です。
一方、ヒラメ筋は膝関節をまたがず、主に足首の動きに関わります。
そのため、足首の動きを確認するときには、膝を伸ばした状態だけでなく、膝を曲げた状態でも動かしてみることが一つのポイントになります。
たとえば、膝を伸ばして足首を曲げるとふくらはぎが強くつっぱるものの、膝を曲げると動かしやすくなる場合には、腓腹筋の柔軟性が足首の動きに影響している可能性があります。
反対に、膝を曲げても足首を前へ動かしにくい場合は、腓腹筋だけでは説明できないこともあります。
この違いを知っておくと、後ほどご紹介するストレッチで、なぜ「膝を伸ばす方法」と「膝を曲げる方法」の両方を行うのかも分かりやすくなります。
足首の関節そのものが動かしにくくなっている場合もある
足首の背屈は、筋肉が伸びるだけで起こる動きではありません。
足首を構成する骨や関節も動きながら、すねが前へ傾いていきます。
そのため、ふくらはぎをストレッチしていても、足首の関節の動きが小さくなっている場合には、思ったように背屈しにくいことがあります。
「ストレッチを続けているのに、しゃがみやすさがあまり変わらない」
「ふくらはぎが伸びるというより、足首の前側が詰まる感じがする」
このような場合は、単純に「ストレッチが足りない」と決めつけず、どこで動きにくさを感じているのかを確認することも大切です。
無理に体重をかけて足首を曲げたり、痛みや強い詰まり感を我慢しながらストレッチを続けたりするのは避けましょう。
昔の捻挫やケガが足首の動きに影響していることも
意外と見落とされやすいのが、過去の足首のケガです。
「学生のころによく捻挫していた」
「昔、足首を骨折したことがある」
「痛みがなくなったので、そのままにしていた」
という方もいるのではないでしょうか。
捻挫や骨折などのあとには、痛みが落ち着いて日常生活に戻れていても、以前と比べて足首の動く範囲が小さくなっているケースがあります。
特に片側だけしゃがみにくい、左右で足首の曲がり方が違う、ケガをした側だけ足首に詰まり感があるといった場合には、過去のケガも確認しておきたいポイントです。
大切なのは、「足首が硬い」という一言でまとめないこと。
筋肉が伸びにくいのか、足首そのものが動かしにくいのか、過去のケガが関係しているのかによって、必要な対応も変わってきます。
では実際に足首が動きにくい状態でしゃがむと、身体はどのように動作を補うのでしょうか。
次は、かかと・膝・股関節・上半身の動きに注目して見ていきましょう。
足首が硬い人は、しゃがむとき身体をどう使っている?
足首が十分に曲がりにくくても、身体はそこで動きを止めるとは限りません。
かかとを浮かせたり、上半身の角度を変えたり、足の置き方を変えたりしながら、別の動きを使って「しゃがむ」という動作を成立させようとします。
実際にどのような動きが起こりやすいのか、一つずつ見てみましょう。
かかとを浮かせて足首の動きを補う
分かりやすいのが、しゃがむ途中でかかとが床から離れる動きです。
かかとを床につけたまましゃがむ場合、身体を下げるにつれて膝が前へ進み、すねも前へ傾いていきます。
ところが足首を前へ曲げられる範囲が小さいと、途中からすねを前へ進めにくくなります。
そこでかかとを持ち上げると、足首をそれ以上深く曲げなくても膝を前へ出しやすくなり、さらに身体を下げることができます。
つまり、かかとが浮くのは単なる「しゃがみ方のクセ」ではなく、足首で取りにくい動きを補いながらしゃがんでいる場合もあるのです。
もちろん、かかとが浮いたからといって、必ず足首に問題があるわけではありません。
大切なのは「浮いたかどうか」だけではなく、どのくらいしゃがんだところで浮くのか、左右同時に浮くのか、片方だけ先に浮くのかまで見てみることです。
上半身を前へ倒してバランスを取る
「かかとを床につけようとすると、後ろに倒れそうになる」
という方もいます。
しゃがむ動作では、身体を下げながら、足の裏で支えられる範囲に重心を保つ必要があります。
足首が曲がりにくく膝を前へ運びにくい場合、そのままお尻だけを後ろへ下げていくと、身体も後方へ移動しやすくなります。
そこでバランスを取るために、上半身を大きく前へ傾けながらしゃがむことがあります。
試しに、かかとを床につけたまましゃがんだときの自分の姿勢を横から見てみてください。
「思っていた以上に胸が前へ倒れている」
「お尻を後ろへ突き出すようにしゃがんでいる」
ということもあります。
ただし、上半身が前傾すること自体が悪いわけではありません。しゃがむ深さや身体のつくり、股関節の使い方によっても前傾の程度は変わります。
ここでも重要なのは、前傾している=悪い姿勢と判断するのではなく、なぜその姿勢になっているのかを見ることです。
足幅を広げる・つま先を外へ向けるとしゃがみやすくなることも
「足をそろえるとしゃがめないけれど、少し広げるとできる」
「つま先をまっすぐ前に向けるより、外側へ向けた方が楽」
このような違いを感じる方もいます。
足幅やつま先の向きを変えると、足首だけでなく膝や股関節の曲がり方、骨盤や上半身の位置も変化します。その結果、同じ人でもしゃがみやすさが変わることがあります。
そのため、つま先が外を向いているからといって、すぐに「悪いしゃがみ方だから直さないと」と考える必要はありません。
一方で、
「足を大きく広げないとしゃがめない」
「片方のつま先だけ大きく外へ向く」
「足の向きを変えないと、足首に強い詰まりを感じる」
といった特徴がある場合には、足の置き方だけでなく、左右の足首や股関節の動きも確認してみるとよいでしょう。
深くしゃがめないときは「どこで動きが変わるか」を見てみよう
しゃがみ動作を見るときに、「床までしゃがめた・しゃがめなかった」だけで判断してしまうと、大切な情報を見逃してしまいます。
注目したいのは、しゃがみ始めから終わりまでの途中で、身体の動きがどう変化するかです。
たとえば、
- 半分くらいまで下がるとかかとが浮く
- 右のかかとだけ先に浮く
- 深くなると急につま先が外を向く
- 途中から上半身が大きく前へ倒れる
- 足首や膝の前側に詰まりを感じて、それ以上下がれない
など、同じ「深くしゃがめない」でも現れ方はさまざまです。
こうした違いを見ることで、単に「身体が硬い」で終わらず、足首が動きにくいのか、別の動きで補っているのか、左右で使い方が違うのかを考える手がかりになります。
そして足首の動きが関係するのは、しゃがむときだけではありません。
歩く、階段を上り下りする、椅子から立つといった普段何気なく行っている動作でも、足首は繰り返し使われています。
次は、足首の動かしにくさが日常の動作にどのように関わるのか、さらに具体的に見ていきましょう。
足首の硬さは「しゃがみにくい」だけ?日常動作への影響
「普段、深くしゃがむことなんてほとんどないから、かかとが浮いても困らない」
そう感じる方もいるかもしれません。
しかし、しゃがむ動作で確認できる足首の動きは、しゃがむときだけに使われているわけではありません。
歩く・階段を上り下りする・椅子から立ち上がるなど、日常のさまざまな場面で足首は身体を支えながら動いています。
では、実際にどのような場面で足首の動きが必要になるのでしょうか。
歩くとき|身体が足の上を前へ進むときにも足首は動いている
歩くときの足首というと、「地面を蹴る動き」をイメージする方が多いかもしれません。
しかし、それだけではありません。
片足を前に出して地面についたあと、身体はその足の上を通過するように前へ進んでいきます。
このとき、かかとが床についている間は、足の裏を地面につけたまますねが前へ傾き、足首が曲がっていきます。
つまり、しゃがむときに使っていた「すねを前へ倒す動き」は、歩行の中でも繰り返し使われているのです。
足首を前へ曲げにくい場合でも歩くこと自体はできますが、歩幅を小さくしたり、かかとが早く床から離れたりするなど、別の動きで補うことがあります。
「普通に歩けているから足首は問題なく動いている」とは限らず、歩けるかどうかだけでなく、どのように歩いているかを見ることもポイントになります。
階段|上り下りでは足首・膝・股関節を一緒に使う
階段では、平らな道を歩くときよりも大きく身体を上下させます。
特に分かりやすいのが、階段を下りる場面です。
一段下へ身体を降ろすときには、足首・膝・股関節を曲げながら、体重を支えて身体の高さを調整します。
このときも、足を段につけた状態ですねが前へ傾くため、足首の動きが必要になります。
足首を前へ曲げにくいと、身体をまっすぐ下へ降ろしにくくなり、膝や股関節の曲げ方、身体の向きなどが変わることがあります。
たとえば、
「階段を下りるときだけ身体を少し横に向ける」
「手すりがあると下りやすい」
「左右で下りやすさが違う」
といった動きが見られることもあります。
もちろん、こうした動きがすべて足首の硬さによるものではありません。
ただ、しゃがんだときにも階段でも同じ側の足首に動かしにくさを感じるのであれば、一つの確認ポイントになります。
立ち座り|重心を移動するときにも足首の動きが必要
椅子から立ち上がるときも、足首は動いています。
実際に椅子から立つところを想像してみてください。
背中をまっすぐにしたまま真上へ立ち上がるのではなく、まず身体を前へ移動させてから、お尻を座面から持ち上げているはずです。
このとき足の裏で身体を支えながら、足首・膝・股関節を連動させて重心を前方へ移動させています。
反対に座るときも、膝と股関節だけを曲げるのではなく、足首を使いながら身体をコントロールして座面まで下ろしていきます。
足首を動かしにくいと、
「立つときに勢いをつける」
「かなり上半身を前へ倒してから立つ」
「座るときにドスンとお尻が落ちる」
など、立ち座りの方法が変わることもあります。
毎日何度も行う動作だからこそ、足首がどのように使われているのかを知ることは、日常の身体の使い方を見直すヒントになります。
スポーツ|走る・着地する・方向を変える動作にも関わる
スポーツでは、歩く以上に大きな力や素早い動きが必要になります。
走る、ジャンプから着地する、急に止まる、方向転換する。
こうした動作では、足首だけでなく膝や股関節も使いながら、地面から受ける力を受け止めたり、次の動作へつなげたりしています。
たとえばジャンプから着地するときには、足首・膝・股関節を曲げながら身体を沈み込ませます。
このとき足首を前へ曲げられる範囲が小さいと、膝や股関節の曲げ方、上半身の位置など、着地するときの動作が変化する可能性があります。
また、ランニングや球技などでは、こうした動きを一度だけではなく何度も繰り返します。
そのためスポーツをしている方の場合は、「しゃがめるかどうか」だけを見るのではなく、走る・止まる・着地するといった実際の動作の中で、足首がどのように使われているかを見ることも大切です。
このように足首の動きは、しゃがむ・歩く・階段・立ち座り・スポーツと、さまざまな動作に関わっています。
では、足首が十分に動かず、膝や股関節などで動きを補う状態が続いた場合、痛みとはどのような関係があるのでしょうか。
次は、足首の硬さと膝痛・腰痛の関係をもう少し詳しく見ていきましょう。
足首の硬さは膝痛や腰痛にも関係する?
「足首が硬いだけなら、膝や腰には関係ないのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、歩く・しゃがむ・階段を下りるといった動作は、足首だけ、膝だけと一つの関節で行っているわけではありません。
足首・膝・股関節、さらに骨盤や上半身まで動かしながら、一つの動作を行っています。
そのため、足首で必要な動きが取りにくくなると、膝や股関節、上半身の使い方が変わることがあります。
ここでは、「足首の硬さがあると、なぜ別の場所の動きまで変わるのか」を具体的に見てみましょう。
足首で取れない動きを膝や股関節などで補うことがある
たとえば、かかとを床につけたまましゃがむときには、足首・膝・股関節をそれぞれ曲げながら身体を下げていきます。
ところが、足首を前へ曲げられる範囲が小さいと、同じ深さまでしゃがむためには別の方法が必要になります。
かかとを浮かせる、股関節を大きく曲げる、上半身を前へ倒すなど、身体は動かせる部分を使いながら目的の動作を続けようとします。
これは「代償動作」と呼ばれることもあります。
代償すること自体が、すぐに悪いわけではありません。身体には、状況に合わせて動き方を変えられる柔軟性があります。
ただし、足首の動かしにくさが続き、歩行や階段、スポーツなどでも毎回同じような動き方を繰り返している場合には、膝や股関節などにかかる力や使われ方も変化する可能性があります。
だからこそ、膝や腰に痛みがある場合でも、痛む場所だけではなく「その動作を身体全体でどう行っているか」まで確認することが大切なのです。
しゃがむ・着地するときの「膝の入り方」が変わることも
しゃがんだときに、膝が内側へ入るような動きが気になる方もいるのではないでしょうか。
このような膝の動きには、股関節まわりの筋力や足部の使い方、動作のクセなど、さまざまな要素が関係します。
その一つとして、足首を前へ曲げられる範囲も関係することがあります。
足首が十分に曲がりにくい状態で身体を下げようとすると、膝や股関節などの動き方を変えて、しゃがむ・着地するといった動作を成立させることがあります。
実際に、足首を前へ曲げる範囲が小さいことと、動作中に膝が内側へ入る「動的膝外反」との関連を報告した研究もあります。
ただし、
「膝が内側に入る=足首が硬い」 「足首を柔らかくすれば膝の動きが必ず変わる」
という意味ではありません。
膝の動きだけを無理に外へ向けようとするのではなく、足首・股関節なども含めて「なぜその動きになっているのか」を確認することが重要です。
上半身の傾きが変われば腰まわりの使い方も変わる
足首の動かしにくさは、下半身だけでなく上半身の使い方にも関係します。
前の章でも触れたように、足首を前へ曲げにくい状態でかかとを床につけてしゃがもうとすると、後ろへ倒れないように上半身を前へ傾けることがあります。
実際に、足首の背屈が制限されている人では、スクワット中の体幹前傾や股関節・腰部の曲がる動きが大きくなることを示した研究もあります。
つまり、足首の動きが変わることで、しゃがむときの「上半身の使い方」まで変わる可能性があるということです。
上半身を前へ傾けること自体が悪いわけではありません。
ただ、重い物を持ち上げる、仕事で何度もしゃがむ、スポーツでスクワット動作を繰り返すなど、負荷が加わる状況では、姿勢が変われば腰まわりの筋肉や関節にかかる力の配分も変わります。
腰に違和感がある方が「腰だけ」を気にしていても、実際の動作を見ると足首の動かしにくさや、そこから生じるしゃがみ方の変化が見つかることもあります。
「足首が硬い=膝痛・腰痛の原因」とは決めつけない
ここまで読むと、
「じゃあ、私の膝痛や腰痛は足首が硬いから?」
と思うかもしれません。
しかし、足首の硬さだけを膝痛・腰痛の原因と決めつけることはできません。
痛みには、負荷の量、筋力、過去のケガ、仕事やスポーツで繰り返す動作など、さまざまな要素が関係します。
また、足首の動きが小さくても痛みなく生活している方もいます。
大切なのは、「足首が硬いから痛い」と考えるのではなく、「足首の動かしにくさによって動作がどう変わり、その結果どこに負担がかかっているのか」を確認することです。
たとえば、膝が痛い方であれば、
「しゃがむときに足首はどこまで曲がっている?」
「膝はどの方向へ動いている?」
「左右で違いはある?」
「上半身を大きく倒していない?」
と動作を順番に見ていくことで、痛む場所だけを見ていては分からなかった身体の使い方が見えてくることがあります。
足首は、その動きを確認するポイントの一つです。
次は実際に、しゃがむ動作と壁を使った方法で、自分の足首がどのように動いているのか確認してみましょう。
自分の足首はどのくらい動く?家でできる2つのチェック
ここまで読んで、「自分の足首は実際どのくらい動いているんだろう?」と気になった方もいるのではないでしょうか。
足首の動きは、ご自宅でも簡単に確認できます。
ただし、ここで行うチェックは「正常・異常」を判断するためのものではありません。
かかとが浮れるタイミングや左右差、どこに動かしにくさを感じるのかなど、自分の身体の特徴を知るために行ってみましょう。
チェック① かかとを床につけたまましゃがんでみる
まずは、この記事のテーマでもある「しゃがむ動作」を確認します。
足を無理のない幅に開き、両足のかかとを床につけたまま、ゆっくり腰を下ろしてみましょう。
このとき、「一番下までしゃがめるか」だけを見るのではなく、途中の動きにも注目します。
チェックしたいポイントは、
- どのくらいの深さでかかとが浮くか
- 左右のかかとは同じタイミングで浮くか
- 片側だけ浮きやすくないか
- かかとをつけていると後ろへ倒れそうにならないか
- 深くなるにつれて上半身が大きく前へ倒れないか
- 片方のつま先だけ外へ向いていかないか
- 足首、膝、股関節に痛みや詰まり感がないか
などです。
たとえば、「浅くしゃがむところまでは問題ないけれど、途中から右のかかとだけ浮く」という場合と、「両足とも早い段階からかかとが浮く」という場合では、動きの特徴が違います。
できれば一度だけではなく、ゆっくり2〜3回繰り返して、毎回同じところで動きが変わるかも確認してみてください。
ただし、痛みが出るところまで無理に深くしゃがむ必要はありません。
チェック② 壁を使って足首を前へ曲げ、左右を比べてみる
次は、しゃがむ動作よりも足首の動きに注目して確認します。
壁の前に立ち、片足を壁に向けます。
かかとは床につけたまま、膝をつま先とおおよそ同じ方向へゆっくり前に出し、壁へ近づけてみましょう。
このとき大切なのは、膝を壁につけることではありません。
次のポイントを確認します。
- かかとが途中で浮かないか
- 足首の後ろ側につっぱりを感じるか
- 足首の前側に詰まるような感覚があるか
- 膝を前へ動かせる範囲に左右差がないか
- 膝を前へ出すときに足が大きく内側・外側へ崩れないか
左右の足を同じ条件で試してみると、
「右はスムーズだけれど左は早くかかとが浮く」
「片側だけ足首の前が詰まる」
「以前ケガをした側だけ動かしにくい」
など、自分では気づいていなかった違いが見つかることがあります。
壁との距離を少しずつ変えながら行うと比較しやすくなりますが、痛みや強い詰まり感を我慢して膝を壁へ押し込む必要はありません。
「何cmなら正常」ではなく、左右差や以前との変化を見る
壁を使った足首のチェックについて調べると、「壁から○cm離れてできれば正常」といった数字を目にすることがあるかもしれません。
しかし、足首の動く範囲には個人差があり、測定方法や身体の特徴によっても結果は変わります。
そのため、ご自宅で確認するときは、数字だけで「正常・異常」を判断するよりも、
左右で大きな違いがないか以前より動かしにくくなっていないか痛みや詰まり感を伴っていないかしゃがむ・歩く・階段など実際の動作で困っていないか
といった点にも目を向けてみましょう。
特に、「昔は問題なくしゃがめたのに最近かかとが浮くようになった」「捻挫した側だけ動きにくい」など、以前との変化がある場合は一つの確認材料になります。
チェックの目的は、無理に足首を柔らかくすることではありません。
自分の足首がどの方向へどの程度動き、その動きにくさが普段の身体の使い方とどう関係しているのかを知ることが大切です。
動かしにくさはあるものの痛みがない場合には、足首周辺を無理のない範囲で動かすことから始めてみるのも一つです。
次は、ふくらはぎの筋肉と足首の動きに着目した、3つのセルフケアをご紹介します。
足首を動かしやすくするために今日からできる3つのセルフケア
足首の動かしにくさが気になる場合は、痛みのない範囲で少しずつ動かしてみましょう。
ここでは、特別な道具を使わずにできる3つの方法をご紹介します。
① 膝を伸ばしてふくらはぎをゆっくり伸ばす
壁に両手をつき、伸ばしたい側の足を一歩後ろへ引きます。
後ろ足の膝を伸ばし、かかとは床につけたまま、身体をゆっくり前へ移動させましょう。
ふくらはぎの上の方が心地よく伸びる程度で止め、反動はつけません。
この方法では、膝と足首の両方をまたいでいる「腓腹筋」を伸ばしやすくなります。
② 膝を軽く曲げて、先ほどとは違う部分を伸ばす
次は同じ姿勢から、後ろ足の膝を軽く曲げてみましょう。
かかとは床から浮かせず、身体をゆっくり下げます。
膝を曲げることで腓腹筋の影響が小さくなり、先ほどよりもふくらはぎの深い部分にある「ヒラメ筋」を伸ばしやすくなります。
①と②で伸びる場所の違いを感じながら、無理のない範囲で行いましょう。
③ かかとを浮かせず、膝を前へ動かして足首を動かす
最後は、しゃがむときに必要になる「すねを前へ傾ける動き」を練習します。
壁の前に片足を出し、かかとを床につけたまま、膝をつま先と同じ方向へゆっくり前に動かします。
膝を前へ出すことよりも、
- かかとが浮いていないか
- 足首の前側に強い痛みや詰まり感がないか
- 膝が大きく内側へ入っていないか
を確認しながら行いましょう。
勢いをつけて押し込むのではなく、「動かせる範囲をゆっくり往復する」イメージで十分です。
ストレッチをしても変わらないなら「筋肉が硬いだけ」とは限らない
セルフケアを続けても足首の動きが変わらない場合、ふくらはぎの柔軟性だけが理由とは限りません。
特に、足首の前側に強い詰まりを感じる、片側だけ動かしにくい、過去に捻挫や骨折をしているといった場合は、無理にストレッチを続けるのではなく、一度状態を確認してもらうことも選択肢です。
また、「深くしゃがめるようにする」ことだけがセルフケアの目的ではありません。
歩く・階段を使う・立ち座りをするといった日常動作の中で、必要なときに足首を使いやすい状態を目指すことが大切です。
「足首が硬いだけ」で済ませない方がいいケース
しゃがんだときにかかとが浮いても、痛みがなく日常生活にも支障がなければ、それだけで身体に問題があるとは判断できません。
一方で、痛みや腫れを伴う場合、ケガをきっかけに動かしにくくなった場合などは、「身体が硬いだけ」と考えず、状態を確認することが大切です。
しゃがむと足首・膝・股関節に痛みが出る
「硬くてしゃがみにくい」のと「痛くてしゃがめない」のは分けて考える必要があります。
しゃがむたびに足首・膝・股関節に痛みが出る場合は、無理に深くしゃがんだり、痛みを我慢してストレッチしたりするのは避けましょう。
片側だけ極端に動かしにくい
左右の足首がまったく同じように動くとは限りません。
ただし、片側だけかかとがすぐ浮く、足首を前へ曲げられる範囲に大きな差がある、片側だけ強い詰まり感があるといった場合は、その理由を確認してみることをおすすめします。
特に、以前のケガと同じ側に動かしにくさがある場合は、次の項目も振り返ってみましょう。
捻挫・骨折などのケガをしてから動きにくくなった
「痛みはなくなったけれど、ケガをしてから足首が曲がりにくい」という場合もあります。
捻挫や骨折のあとに足首の動く範囲が小さくなっていることもあるため、ケガをする前と比べて動きにくさが残っていないかを確認してみましょう。
自己流で強く伸ばすよりも、現在の足首の状態を確認したうえでセルフケアを選ぶことが大切です。
腫れ・熱感・急な痛みがある場合は医療機関へ
足首に強い痛みがある、腫れている、熱を持っている、ケガをして急に動かせなくなったといった場合は、単なる「足首の硬さ」とは分けて考える必要があります。
また、体重をかけるのが難しいほど痛む場合なども、セルフケアを続けるのではなく、整形外科などの医療機関で状態を確認してもらうことを優先しましょう。
足首の動かしにくさにはさまざまな理由があります。
だからこそ、「柔らかくすればいい」と一括りにせず、いつから・どこが・どの動きで気になるのかを確認することが大切です。
しゃがみにくさは「足首の使い方」を見直すきっかけになる
「しゃがむとかかとが浮く」という動きは、それだけで身体に問題があることを意味するものではありません。
ただ、足首を前へ曲げにくい、片側だけ動きが違う、しゃがむ途中から身体の使い方が大きく変わるといった場合には、足首がどのように使われているのかを知るきっかけになります。
特に膝や腰などにも違和感がある場合は、「足首が硬い」で終わらせず、実際の動作まで確認することが大切です。
整骨院では足首の硬さだけでなく「どこで動きが変わるか」を確認する
整骨院で身体を見るときは、単純に「足首が硬い・柔らかい」だけを確認するわけではありません。
たとえばしゃがむ動作なら、
- どの深さでかかとが浮くのか
- 左右で足首の動きに違いがあるか
- 膝やつま先がどの方向へ動くのか
- 上半身を大きく前へ倒していないか
- どの動きで痛みや詰まり感が出るのか
などを確認します。
こうして「どこが硬いか」だけでなく、「どのタイミングで動き方が変わっているか」を見ることで、その方の身体の使い方を把握しやすくなります。
足首・膝・股関節を実際のしゃがみ動作の中で確認する
足首だけを動かしたときには問題がなくても、実際にしゃがんでみると左右差が現れることがあります。
反対に、足首の動く範囲が小さくても、膝や股関節をうまく使ってスムーズに動けている場合もあります。
そのため、足首だけを単独で確認するのではなく、足首・膝・股関節がしゃがむ動作の中でどのように連動しているのかを見ることも重要です。
必要に応じて身体の状態に合わせた施術や運動、セルフケアを取り入れながら、普段の動作を見直していきます。
「深くしゃがめること」ではなく、必要な場面で足首を使えることを目指そう
この記事を読んで、「かかとをつけて深くしゃがめるようにならないと」と思う必要はありません。
目指したいのは、しゃがみの深さを競うことではなく、歩く・階段を使う・立ち座りをするなど、必要な場面で足首を無理なく使えることです。
しゃがむとかかとが浮く、左右で足首の動きが違う、膝や腰にも負担を感じるなど、気になることがあれば、一度普段の身体の使い方に目を向けてみてください。
何気なく行った「しゃがむ」という動作が、これまで気づかなかった足首の動きを知るきっかけになるかもしれません。



